根管治療とは?

根管治療とは、一般に『歯の神経を抜く治療』『歯の根っこの治療』といわれる治療のことです。
歯の内側には、神経や血管を含む「歯髄(しずい)」と呼ばれる組織が存在しています。
これらの神経や血管は「根管」と呼ばれる細い管を通って、全身の神経や血管へとつながっています。

大きな虫歯などでこの歯髄に細菌が感染した場合、歯髄全体を取り除き、根管内を清掃・消毒する治療をおこないます。
これが皆さんが最初に受ける根管治療(神経を抜く治療)です。

根管治療の成功率が低い理由

日本では根管治療に保険が適用でき、多くの方が保険の範囲内で治療を受けています。
しかし保険診療では治療に使用する機材や薬剤に制限があるため、治療の精度をあげるのにも限界があります。
つまり保険治療は「費用が安い」というメリットの一方で、治療精度を低くする要因にもなっているわけです。

根管治療のメリット

根管治療を行うことで得る最も大きなメリットは、ご自身の歯を残すことです。
根管治療後は型取りを行い、セラミッククラウンなどの被せ物を装着して噛む機能を修復するため、ご自身の歯を残すことができます。

確実な根管治療を受けるために大切なこと

日本の根管治療は、歯科先進国の欧米に比べて技術や治療設備において後れているといわれています。
しかし、日本における根管治療でもごく少数ではありますが、欧米レベルの精度の高い治療を受けることができます。
例えば、マイクロスコープを導入している歯科医院であれば、より精密な治療を受けることが可能です。

 

根管治療における保険診療と自費診療の違い

根管治療は保険診療で行うものと自費診療で行うものがあります。
どちらも根管治療であることには変わりませんが、保険診療と自費診療ではどう違うのでしょうか。それぞれの成功率についてもご紹介します。


保険診療で行う根管治療

根管治療はそもそも保険診療で行われるため、全国の保険治療を行っている歯医者で治療を受けることができます。
保険適用で行う根管治療ではレントゲン撮影を行い、病巣の原因となっている部位を確認します。
その後歯を削って虫歯部分を取り除き、根管内部の汚れを取り除きます。
このとき使う器具が「ファイル」と呼ばれる細い針状の器具で、ファイルを根管内部に入れて汚れを掻き出します。
保険診療で使われるファイルはステンレス製のもので、硬くてパワーがあります。
しかし、しなやかさに欠け、曲がった形状の根管などは先端までファイルが届きにくいという欠点があり、細菌の取り残しを招くことがあります。
そして保険診療の根管治療のほとんどが、先生の経験と勘によって治療が行われます。
暗くて狭い根管内部の汚れを完璧に取り除くことは至難の業で、患者様の根の形状によっては先端が曲がっているなど複雑なものもあります。
根管内部にほんの少しの細菌が残っているだけで再び細菌感染し、根管治療のやり直しになってしまいます。
保険診療の根管治療の成功率は50%程度と言われています。
つまり2人に1人が再根管治療を必要としている結果は、保険診療で行う根管治療の限界ということを示唆しています。


自由診療で行う根管治療

では自由診療の根管治療はどうでしょうか。
行う治療過程は保険診療と大きく変わりません。しかし保険診療と自由診療の大きな違いは、設備です。
根管治療を成功に導くためには保険では使うことができないCT・マイクロスコープ・ラバーダムを使用することが大きなポイントです。
この三点は根管治療をお受けになる方ならぜひとも覚えておいていただきたいキーワードです。
CTは立体的に画像を映し出すため、レントゲンでの平面画像ではわかり辛い根の形状などもしっかりと確認することができます。
マイクロスコープは歯科治療用の拡大顕微鏡で、暗く狭い根管内部を治療する際には欠かすことができません。
目で確認しながら治療を行うことで、細菌の取り残しはもちろん、レントゲンでは気づかないような歯のヒビなどを発見することもあり、トラブルを未然に防ぐことができます。
ラバーダムは治療する歯以外の部分を覆う防水シートです。
根管治療では細菌や水分の侵入に細心の注意を払いながら治療を進めていかなければいけません。
ラバーダムは、治療する歯だけを露出させ、水分や細菌が入り込まないように防御する働きがあります。
またファイルなどの細かい器具がお口の中へ落下するのを防ぎ、安心に治療を進めるための役割も持っています。
CTやマイクロスコープ、ラバーダムを使い、専門医が時間をかけて丁寧に行う自由診療の根管治療の成功率は、保険診療とは比較にならないほど成功率が高いと報告されています。
例えば根管治療の成功率を上げるためのラバーダムは、2008年に保険適用外となったため、保険診療のみ根管治療を行っている歯医者で使用しているところはほとんどないでしょう。
なぜなら、保険診療でラバーダムを使用する場合は、歯科医院にとってかなり赤字となってしまうからです。
自由診療ではこのような制限がなく、治療で使う薬剤も保険のものより質が高いものが使われます。
以上のことからわかるように、保険診療と自由診療では根管治療の成功に大きな差が出るのです。